恋人の連れ子 

ぜーはーぜーはー。たまにピー。

只今絶賛喘息発作中。喉が締め付けられ気道も肺もいつもの半分くらいのよう。気を抜くと咳込んでしまい、咳込むと止まらなくなる。普通の呼吸ができないので浅めのを小刻みに回数で稼ぐしかない。苦しい。ピー、とは肺から小さく出る音だ。ひゅー、の時もある。どうやら息を吐く時に出る音のようである。

 

4~5才の頃か。私は立派な小児喘息持ちだった。発作が出ると運動はおろか歩くのもいけないと医者に言われ、たかが数メーター先のトイレに行くのにもおぶってもらっていた。そのうち、肺を鍛えなきゃいかんと母親にスイミングクラブに連れて行かれ、その甲斐あってか小学校に上がる頃にはすっかり治っていた。

現在38歳。肺を鍛えるどころか煙草を一日2箱、きっちり20年間吸い続けてきてしまっている。最近こそ(当時の恋人に言われ)電子煙草に切り替えて本数も気にするようになったけど、紙の煙草に比べてむせたり咳込んだりが明らかに増えた。どうなっとるんだ電子煙草の健康被害情報は。そんなことで悩むくらいなら煙草やめろよってお説教は聞き飽きてるので今日は勘弁。

ただそんな「肺いじめ」の結果が招いたのか、元々のアレルギー体質のせいなのか、発症してしまったのだ。オトナになってからの喘息発作。

そのきっかけとなった大きな原因は愛犬・小次郎であることは間違いない。(通称こったん・オス・現在4才)

 

<恋人の連れ子>

一瞬で恋に落ちた。理想像ってものは元々そこまで持ち合わせていない私だったが、出会った瞬間から常にガッツポーズ続き。連続で拳をピストンさせ「YESYESYES!!!」神様っているんですね!!!脳内広瀬香美状態。

その頃ドラマ「東京ラブストーリー」が何度目かの再放送中だったのだけど、平成生まれの若者達が昭和のテンションにドン引きしSNSがざわつきにざわついているとのことだった。私は目下完全にあちらの世界に通用するテンションで、周りからも「赤名リカをも超えるレベル」と茶化されていた。

そんな中、ロマンスの神様噓って言って!と弱気になる1枚の写真が彼から送られて来た。

「小次郎です。」「犬、好き?」

クリーム色で困り顔のわんこがちょこんとお座りしている。

ガーーーーーーン。

パグ?って聞いたかも知れない。正解はフレンチブルドッグだった。(パグとフレブルがごっちゃになるのが一般人あるある)

犬種はどうだっていい。私は正真正銘100パーセントのアレルギー体質なのだ。

ありとあらゆるアレルギー持ち、犬なんてもってのほかのすけ!犬アレルギー度?1000パーセントだよ!!

出会ったその日に「うちの嫁に」と口を滑らせ「あっまずは友達からだよねっ?ごめんごめん」と頬を赤らめていた彼。正式にデートした夜には私から「ねえ結婚しない?」と言ってしまった、いわゆるビビビと来まくった彼。バカにされるのを承知で書くが、本気で前世生き別れた恋人だと感じた瞬間もあったのだ。

犬がいるなんて聞いてない!!!私は恐る恐る問うてみた。

「小次郎くん、いくつ?」

「2才だよ!」

頭を抱えた。それから放心状態。2才と言うことは軽く見積もっても寿命はあと8年以上だろう。

無理だ。

犬愛好家には石を投げられる発想だが、老犬だったらともかく、と思った。こちとらバキバキのアレルギー体質なのだ。犬と10年も暮らせる訳がない!

お散歩中のわんちゃんをうっかり撫でたりしたもんなら、その日は丸一日全部の指の間、手の甲、手首まで蕁麻疹が消えない。激しい痒みと共に。触った傍からアルコール消毒し、ハンドソープで洗いまくってるのにも関わらず、だ。

猫を飼ってる男に抱きしめられた直後、男のセーターに触れた右の頬だけ蕁麻疹で腫れあがったこともある。犬を飼ってる男のバイクの後ろに乗った直後も然り。(しかもスカジャンだった、ツルツル素材でもお構いなし)

服だけじゃない。車のシートだってソファーだってそうだ。スカートもパンストもパンティだって履いているのに難なくアレルゲンは通過し、座った後は必ずお尻と太ももにびっちり真っ赤な蕁麻疹が出るのだ。

そしてこれがとてつもなく痒い。痒いどころの話ではない。アトピー持ちだけどアトピーの痒さなんか比にならんくらい強烈な痒みなのだ。

 

運命だと思った相手が犬と暮らしている…。

この話、なかったのかも…と心底落ち込みに落ち込んだ。

 

続く

《問題の写真「小次郎です」》

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